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ITILに基づく問題管理とは?インシデント管理との違いとツール活用のメリット
ITIL®では、問題管理は、ITサービスの品質と信頼性を向上させるための重要なプロセスに位置付けられています。インシデントの根本原因を究明し、解決策を特定するITサービスマネジメント(ITSM)の重要なプロセスでもあります。ここからは、事例を用いて、問題管理の役割やインシデント管理との違いについて解説します。
まず、問題管理とインシデント管理の違いを知るためにも、以下の事例から「問題管理」とは何かをひも解いていきます。
ITSMにおける「問題」の定義とは?

【事例】プリンターが動かず印刷できないトラブルと、ITSMにおける分類
営業社員から「プリンターが動かず、会議で使う資料を印刷できない」とサービスデスクに問い合わせがありました。
サービスデスクの担当者は、一時的な解決策(ワークアラウンド)として、同じフロアの別のプリンターを使って印刷するように提案。その結果、会議の進行に影響を与えずに対応できました。
その後、業者に連絡し調査を依頼したところ、プリンターのメインボードの破損が原因であることが判明し、修理が実施されました。
<ITSMにおける分類>
- インシデント(Incident):「プリンターが動かず印刷できないこと」。業務に影響を与える突発的な事象
- 問題(Problem):プリンターの故障(メインボードの破損)」。インシデントの根本原因
ITILの定義では「問題」は、「1つ以上のインシデントの原因、または潜在的な原因」とされています。例えば今回の事例の「プリンターのメインボードが破損して印刷できなくなる」状態は、サービスデスクにとって単なるインシデントで終わらせるのではなく、ITILが示すプロセスに沿って問題管理を行うことで根本解決が可能となります。
ITILにおける問題管理とは?
ITIL®における問題管理(Problem Management)とは、インシデントの根本原因を特定し、恒久的な解決策を実施することで、インシデントの再発を防ぎ、ITサービスの安定性を向上させるプロセスです。すでに発生したインシデントの原因を調査・解決するリアクティブ問題管理と、将来のインシデントを未然に防ぐプロアクティブ問題管理の2種類に分類されます。
一方、問題管理プロセスでは、二度と同じ事象が発生しない状態をつくる必要があります。そのため、印刷できない原因を突き止め、解決策を立案し、解決するまでの作業が求められます。
この事例では、「業者に調査をしてもらい、プリンターを修理してもらう」という対応が問題管理プロセスと言えます。
現場ではこのようにして、インシデントの発生から始まる問題管理のプロセス上で、インシデントと問題に対する対応がそれぞれ求められることになります。
ITILにおける問題管理のプロセス
ITILでは問題管理を以下の主要なステップで構成しています。
ステップ | 内容 | 事例の場合 | |
---|---|---|---|
Step 1.問題の識別と記録 | インシデント管理からのエスカレーション 繰り返し発生するインシデントや重大な影響を及ぼすインシデントが発生した場合、インシデント管理プロセスから問題管理に引き継がれます。 | 特定のプリンターで頻繁に印刷エラーが発生している ⇒ 問題管理プロセスへ移行 | |
Step 2.分類と優先順位付け | 発生した問題を記録し、カテゴリ・優先度・影響範囲を定義する 既知のエラーDB(KEDB: Known Error Database)を確認し、類似の問題が登録されていないかをチェック。 | プリンターのエラーが同じ部署で発生しているため、ハードウェアの故障が疑われる ⇒「ハードウェア関連問題」「高優先度」などの分類を行う。 | |
Step 3.調査と診断 | インシデントの原因を特定するための調査を行う | プリンターの電源は入るが印刷ができない ⇒ 調査の結果、メインボードの破損が原因と判明。 | |
Step 4.既知のエラーの記録 | 根本原因が特定され、ワークアラウンド(暫定対処)が確立されたら、既知のエラー(Known Error)としてKEDBに登録 | メインボードの破損により印刷が不可 ⇒「同様の事象が発生した場合、別のプリンターを使用する」というワークアラウンドを設定し、KEDBに記録。 | |
Step 5.解決策または回避策の策定 | 根本原因に対して、恒久的な解決策を実施 | プリンターのメインボードを交換し、問題を根本的に解決する ⇒ 変更管理プロセスを通じて、修理を実施。 <ポイント!>ITILにおいて、問題管理は変更管理と密接に連携しています。そのため問題管理と変更管理のプロセスをシームレスに統合させることが重要です。 | |
Step 6.問題の解決とクローズ | 恒久的な解決策が実施され、影響が解消されたことを確認し、問題をクローズ | プリンターの修理完了後、正常に動作することを確認し、問題をクローズ。 | |
Step 7.ナレッジ共有と継続的改善 | 得られた知見をナレッジマネジメントに反映し、ITサービスの継続的な改善(CSI: Continual Service Improvement)を推進 | 他のプリンターでも同様の問題が発生しないかをモニタリングし、メンテナンス計画を見直す。 |
問題管理プロセスを導入するメリット
上記のようにITILのフレームワークに沿った問題管理プロセスを導入することで、インシデント発生時の緊急対応だけでなく、根本原因を特定して解決するための体系的な業務フローを構築できます。これにより、以下のような課題を防止・改善することが可能です。
<解決できる課題の例>
- 同じインシデントが繰り返し発生する(根本原因が解消されないため)
- ビジネスへの影響を判断し、復旧までに時間がかかる
- 根本的な問題解決のためのナレッジが蓄積されない
問題管理の実施で、ITILフレームワークに準拠したワークフローを整備し、インシデントの再発防止を体系的に管理する仕組みが整うことに加え、変更管理との連携もしやすくなり、根本原因の解決に必要なシステム変更やプロセス改善を効率的に実施できるようになります。
また、既知のエラーを記録・蓄積する仕組み(KEDB:Known Error Database)を活用することで、同様のインシデントが発生した際の対応時間を大幅に短縮でき、迅速な対応でサービス品質や顧客満足度も向上できます。
問題管理の効果を最大化する効果的な指標
問題管理の効果を最大化するために、KPI(重要業績評価指標)や計測指標を設定すると有効です。ITILでは、問題管理のパフォーマンスを可視化するために、以下のような指標を活用することを推奨しています。
Problem Resolution Time(問題解決時間):問題が特定されてから解決に至るまでの平均時間
First Time Fix Rate(最初の対応で解決できる割合):1回目の対応で問題を解決できた割合
Recurring Incidents(再発インシデント数):同じ問題に起因するインシデントの発生回数
これらの指標を定期的に測定し、改善策を講じることで、問題管理の成熟度を高めることが可能です。
問題管理ツールの選び方
先ほどの『ITILにおける問題管理のプロセス』でご紹介した各プロセスを、実際の業務に適用するには、適切なツールの活用が不可欠です。しかし、どのツールを選択するかは慎重に検討する必要があります。例えば、「インシデントは頻繁に発生しないので、Excelで十分ではないか?」と考えるケースもあります。また「ノーコードの業務支援システムを活用すれば、問題管理アプリを構築できるのでは?」といった意見もあります。それぞれのツールのメリットとデメリットを見てみましょう。
管理方法 | メリット | デメリット | ITILプロセスへの適合度 | |
---|---|---|---|---|
Excel等の表計算ソフト |
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独自の文書管理システム |
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専用の有償ツール |
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このような比較をもとに、理想的な問題管理を実現するために、以下の要件を満たす問題管理ツールを選ぶと効果的です。
1)ITILのベストプラクティスに基づいたツール
2)問題管理の7つのステップ(問題の識別、記録、根本原因分析、既知のエラー登録、解決策の実施、問題のクローズ、継続的改善)を網羅する機能を備えている
3)「インシデント管理」との統合が可能であり、問題の根本原因を特定し、インシデントの再発防止に役立てられる
4)「変更管理」との連携ができ、根本原因の解決に必要な変更をスムーズに実施できる
問題管理を適切に行うためには、インシデントと問題を分けて管理しつつ、両者を適切に連携させることが重要です。しかし、これを手作業で運用するのはかなり手間がかかります。そのため、多くの管理者は専用のツールを活用することで、問題とインシデントのリストを一元管理しています。
実際の業務現場では、Excelを使って問題管理を行っているケースもあります。しかし、Excel管理では複数の担当者が同時に作業を行う際の整合性の確保や、ファイル共有に伴うリスクが課題となることが多いです。そのため、専用の問題管理ツールを導入することで、業務の効率化や管理の一元化を実現し、インシデント対応と問題解決をスムーズに進めることができます。
特にITILに準拠したサービスデスクツールを導入すれば、インシデント管理・問題管理・変更管理などの各プロセスを統合し、情報を一元管理できるため、より効果的な問題管理を実践することが可能となります。