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ITサービスデスクチームは、ITSMソリューションに多くの時間を費やすことが多いため、充実したナレッジベース管理機能を備えたITSMソリューションを見つけることをお勧めします。
ナレッジ管理の説明とプロセス、導入方法、また、ITIL®フレームワークから見たナレッジ管理の重要性を紹介します。
目次
ナレッジ管理の目的
ナレッジ管理とは、ITサービスデスクで生まれた知識や気づきを収集・分析・保存・共有するプロセスです。情報の流れを整理し、効率よく管理することで、ITサービスのライフサイクル全体やインシデント解決のプロセスをスムーズにし、サービスデスクチームが適切な判断を下せる環境を整えます。
ITサービスマネジメント(ITSM)の中でも、ナレッジ管理は「知識の提供」という重要な役割を担っています。例えば、インシデント管理や問題管理では、解決策や既知のエラーを記録したデータベースが不可欠です。ナレッジ管理を適切に運用することで、発行されたチケットの迅速な解決につながり、サービスの質を向上させることができます。
ITILにおけるナレッジ管理
ITIL®(IT Infrastructure Library)とは、ITサービスマネジメント(ITSM)のベストプラクティスを体系化したフレームワークです。
ITILでは、ナレッジ管理を「サービスバリューシステムのあらゆる段階で活用される重要なプラクティス」と位置付けています。分かりやすく言うと、ナレッジ管理は「ITサービスの提供から改善まで、すべてのプロセスで役立つ重要な仕組み」であり、過去の対応や知識を活用し、効率的に問題を解決しながら、サービスの質を向上させる基盤となるものです。
ITILのサービスナレッジマネジメントシステム(SKMS)は、組織内に蓄積されるナレッジを一元的に管理し、インシデントや問題の解決速度を高め、継続的なサービス改善(CSI)を支援する仕組みとして定義されています。ITIL 4では、ナレッジ管理は「サービスバリューシステム(SVS)」を支える重要なプラクティスの一つと捉えられています。適切な権限管理や承認フローを備えたナレッジベースは、インシデント管理や問題管理、変更管理などの他のITILプロセスと密接に連携し、組織全体の生産性を向上させます。
なぜナレッジ管理が重要なのか?
IT技術担当者がチケットを解決するたびに、新しいソリューション(解決策)が生み出されます。これをナレッジベースに記録し、担当者が迅速にアクセスできる環境を整えることが重要です。ナレッジ管理が不十分だと、以下のようなリスクが発生する恐れがあります。
- インシデント対応の遅延:同じ問題が再発しても、解決策が共有されていなければ、再びゼロから調査する必要があります。
- ビジネスのダウンタイム増加:システム障害の影響が長引き、業務への影響が拡大してしまいます。
- ITサービスデスクの負担増:問い合わせのたびに技術担当者が対応することになり、重要業務が圧迫されます。
【 事例1 】ナレッジ管理の欠如が引き起こす影響
あるWebサービス企業で大規模な障害が発生し、多くのユーザーが「Bad Gateway」エラーに直面しました。技術チームが調査した結果、Webアプリケーションファイアウォール(WAF)のアップグレードによるCPU使用率の急増が原因と判明。解決策として、WAFを元のバージョンにロールバックすることで問題を解決しました。このようなインシデント対応の詳細がナレッジベースに記録されていない場合、同様の障害で再び調査に膨大な時間を割くことになってしまいます。ITILの問題管理プロセスでは、類似インシデントの発生を防ぐために、根本原因と解決策をナレッジとして文書化することが求められています。
【 事例2 】ナレッジ管理によるITサービスデスクの最適化
テレワーク実施企業において、VPN設定に関する問い合わせが急増したケースを考えてみましょう。ナレッジ管理が適切に行われていれば、技術チームはVPN設定の手順をまとめた記事をナレッジベースに登録し、自宅でテレワーク中のユーザーはそれを見て自己解決できます。その結果、ITサービスデスクの負担が軽減され、技術担当者はより戦略的なITプロジェクトに注力できるようになります。これはITILにおける「サービスの価値向上」という観点からも重要です。
ITILにおけるナレッジ管理の役割とライフサイクル
ITILにおけるナレッジ管理のライフサイクル
ITILにおけるナレッジ管理のライフサイクルについては、分かりやすく以下のような業務に集約することができます。
1.データの収集
組織内で発生するインシデント、変更管理、運用記録、サービスデスク対応履歴などのデータを収集します。
【上記の事例の場合】VPN接続の問題が頻発していることに気づいた技術担当者が、対応手順を記事化し、ナレッジとして投稿。
2.情報の整理・加工
収集したデータを、意味のある情報として整理・分類し、ナレッジベースに登録します。
【上記の事例の場合】「VPN接続エラーの解決手順」を「テレワーク」のカテゴリに分類し、関連するエラーメッセージをタグ付け。
3.ナレッジの共有・活用
整理されたナレッジを、関係者が適切に利用できるように公開します。
【上記の事例の場合】「VPN設定の手順」がナレッジベースで公開され、ユーザーが自己解決できるようになる。
4.ナレッジの維持・改善
ナレッジを最新の状態に維持し、継続的に改善します。
【上記の事例の場合】「VPN設定手順」の記事を、新しいセキュリティプロトコルに合わせて更新。
ナレッジ管理における役割と責任
ナレッジ管理を適切に運用するためには、以下の3つの役割が重要になります。
1.記事の寄稿者
ナレッジを提供する役割を担い、技術担当者やサービスデスクのメンバーが、チケット対応時に得た情報を記事として投稿します。
【上記の事例の場合】VPN接続の設定方法に関する記事を作成し、レビュー用に提出。
2.対象分野のエキスパート(SME)
特定の分野の専門知識を持つエキスパートが、ナレッジの技術的な正確性を確認します。
【上記の事例の場合】ネットワークの専門家が、VPN設定の記事の技術的な正確性を確認し、承認。
3.ナレッジマネージャー
ナレッジ管理プロセスの全体的な統括と最適化を担当します。
【上記の事例の場合】VPN設定の記事を「テレワーク」カテゴリに分類し、閲覧データを分析して改善。
ナレッジ管理のためのDIKWモデル
データ(Data)、情報(Information)、ナレッジ(Knowledge)、そして知恵(Wisdom)のDIKWモデルでは、ITサービスデスクが日頃の業務に基づいたナレッジを生成できる方法を説いています。また、データを情報・ナレッジ・知恵に変換する方法と、それらの関係についても示しています。このモデルを「DIKWピラミッド」または「DIKW階層」と呼びます。
DIKWの説明
- Data(データ):事象についての個々の事実(データ)の集まり。この段階で実行される主なタスクは次のとおりです。
・データ取得のための信頼できるソースの特定
・適切なデータのアーカイブと削除 - Information(情報):データに基づいて加工された情報。この段階で実行される主なタスクは次のとおりです。
・データの整合性を保ちながら、データを情報に変換
・エンドユーザーが検索・利用しやすいように、情報を適切に管理 - Knowledge(知識):個々で持っている知識、経験、考え、見識や価値。知識は経験から導き出されます。ナレッジマネージャー・対象分野のエキスパート・技術者・エンドユーザーなど、ITサービスデスクチームに関わるメンバーの専門知識、価値観、判断が含まれます。この段階で生み出された知識は、スマートな意思決定を促進させます。
- Wisdom(知恵):常識的な判断を行い、知識を応用して処理する能力。知恵はデータ・情報・ナレッジの集大成であり、ナレッジ管理に付加価値をもたらします。この価値はダイナミックで活動的な計画、問題解決、戦略的計画、および識別力によって生み出されます。
データを複数あつめるとデータベースとして扱うことができるようになります。集まったデータに対して意味を持たせることで情報になります。情報に対して経験や学習、これまでの知識を組み合わせることで、新しい知識になります。常識的な判断の上で処理された知識は知恵となります。
ナレッジ管理の概要とツールの活用法を知りたいという方は、下記のホワイトペーパーもお勧めです。
ITILに基づくナレッジ管理導入ステップ
ステップ1:目標設定とナレッジギャップ分析
【目的・目標の明確化】
まずは、ITサービスデスクがどのような情報に付加価値を見出し、最大の利益をもたらすかを評価します。短期目標(FAQの充実など)と長期目標(サービス改善やコスト削減など)を設定することで、導入方向を明確化。
【ナレッジギャップ分析】
再発インシデントの多いカテゴリ、エンドユーザーからの問い合わせ傾向、調査レポートなどを確認し、不足しているナレッジを特定します。
例:VPN接続に関する問い合わせが多い → 「VPN設定ガイド」や「トラブルシューティング手順」のナレッジ充実が必要
ステップ2:ナレッジ共有文化の創造
ITILでは継続的サービス改善(CSI)の一環として、組織全体での情報共有の促進を重視しています。ゲーム化(Gamification)やインセンティブを活用し、技術担当者やユーザーが積極的にナレッジを共有できる文化を育成します。※ゲーム化とは、ゲームの要素(ポイント、バッジ、ランキングなど)を業務プロセスに取り入れ、参加意欲を促す手法です。
ステップ3:適切なテクノロジー/ソリューションの使用
ITILのサービスナレッジマネジメントシステム(SKMS)や、ヘルプデスクソフトウェアに組み込まれたナレッジベースを利用。キーワード検索やFAQ管理がシームレスに行える仕組みを整備し、ITセルフサービスポータルを通じてエンドユーザーが簡単にアクセスできるようにします。
例:ヘルプデスクソリューションServiceDesk Plusを用いて、ユーザーが直接ナレッジ記事を閲覧でき、技術担当者は迅速にナレッジを作成できるようにする。
ステップ4:ナレッジ活用と継続的改善(CSI)
上記の3つのステップが完了したら、利用状況(閲覧数、解決率、問い合わせ数の推移)をモニタリングし、ITILの継続的サービス改善(CSI)に沿って、ナレッジの質を高めるサイクルを回していきます。
質の高いナレッジ管理を維持するいくつかの方法を次に示します。
- 既存の情報源を特定して追跡する
- 必要なバックアップを行い、体系的にナレッジを監査・保存する
- 記事を更新し、定期的にソリューションの関連性を確認する
- ナレッジベースでの活動を監督するためユーザーに適切な役割を割り当てる
- ナレッジベースの知識を測定し、その有効性を評価する
ナレッジ管理とその成功事例を構築することで、ナレッジ記事は問題解決の副産物として自動的に作成されます。 さらにこの中身は需要と使用状況に基づいて改善されていきます。また、ナレッジベースは、サービスデスクチームの経験を集約したリポジトリとなっています。その結果、応答時間が改善され、エンドユーザーと技術担当者が利用できる情報の品質が向上します。
ナレッジ管理の実装方法
ナレッジ管理ソリューションの選び方
ITSMソリューションServiceDesk Plusを活用すれば、ITILのベストプラクティスを踏襲しながら、ナレッジ管理の導入から運用まで、確実かつ効率的に実行できます。
セルフサービスポータルとの統合
ナレッジ管理ソリューションを選ぶ際は、セルフサービスポータルとの統合が重要です。ポータルを通じてエンドユーザーが自己解決できる仕組みがあれば、チケットの件数を軽減でき、ITサービスデスクの負担も減らせます。多くのITSMツールには、ナレッジ記事の自動提案機能が備わっており、ユーザーが簡単に解決策を見つけられるよう設計されています。技術担当者の生産性向上にもつながるため、ポータル連携機能の有無は重要な選定ポイントとなります。
スマートナレッジの創造
技術担当者が簡単にナレッジ記事を作成・登録できる環境も必要です。そのため、チケット対応とナレッジ管理がシームレスに連携できる機能があると便利です。具体的には、技術担当者が複数の画面を行き来することなく、チケット画面から直接ナレッジ記事を作成・更新できる仕組みが理想です。選定時は、チケットとナレッジベースの統合性、記事作成のしやすさ、自動登録機能の有無などを重視しましょう。
ITILのフレームワークに基づくポイント:チケット対応時に得た知識を継続的に蓄積し(CSI)し、再利用性を高める。
ServiceDesk Plusの特長:技術担当者がチケット画面からワンクリックでナレッジ記事を作成でき、ナレッジ登録を効率化。
ワークフロー管理
ナレッジ記事のライフサイクルを効率的に管理できるワークフロー機能が不可欠です。具体的には、記事の作成・更新・承認・公開・削除がスムーズに行える機能を備えたソリューションを選びましょう。これにより、ナレッジの品質を維持しながら、常に最新の情報を提供できます。また、トピック別に記事を分類・管理できる柔軟な設定があるか否かも重要です。
ITILのフレームワークに基づくポイント:ナレッジ記事のレビューや承認を標準プロセスに組み込み、品質を一定に保つ。
ServiceDesk Plusの特長:記事の更新・削除・承認プロセスをワークフローで可視化し、担当者がライフサイクルのどの段階でも記事を管理できる。
ロール管理とアクセス許可
役割に応じたアクセス管理機能があるかどうかを確認しましょう。ナレッジマネージャーや管理者が、技術担当者の権限を適切に設定・制限できることが重要です。具体的には、閲覧のみ・編集・承認・管理など、段階的な権限設定が可能かをチェックしましょう。また、新しい役割を作成し、特定のカテゴリや記事へのアクセスをカスタマイズできる機能があると、より柔軟な管理が可能になります。選定時は、ITSMソリューションのアクセス制御機能が、自社のセキュリティポリシーや運用体制に適合しているかを確認することも重要です。
ITILのフレームワークに基づくポイント:機密情報を保護しつつ、必要なユーザーには的確にナレッジを共有できる。
ServiceDesk Plusの特長:ナレッジマネージャーや管理者がロール設定をカスタマイズ可能。閲覧・編集権限を柔軟に割り当て、複数のカテゴリに対応。
合理化された承認プロセスと品質管理
記事の承認プロセスが適切に管理できる機能はぜひとも必要です。セルフサービスポータルに公開する前に技術担当者が記事をレビュー・承認できるワークフローがあれば、情報の正確性と品質を維持できます。また、記事のパフォーマンスを分析できるレポート機能も重要です。閲覧数・解決率・フィードバックなどの指標を可視化することで、ナレッジの有用性を評価し、継続的な改善につなげることができます。選定時は、承認ワークフローの柔軟性とレポート機能の充実度を確認しましょう。
ITILのフレームワークに基づくポイント:公開前に記事の品質と正確性を担保し、誤情報の拡散を防止。
ServiceDesk Plusの特長:承認フローを自動化し、新規記事がセルフサービスポータルで公開される前にレビューを必須に。
フィードバックの仕組みと品質向上
記事の有用性を評価し、継続的に改善できるフィードバック機能も確認しましょう。特に、クローズドループのフィードバックプロセスを備えたソリューションでは、ナレッジベースの品質向上が効果的に行えます。
具体的には、以下の機能が重要です。
- 記事の評価機能(「役に立った」「役に立たなかった」の簡単なフィードバック)
- 詳細なレポート・指標(閲覧数、解決率、ユーザー評価)
- ナレッジマネージャー向けの分析機能(記事の内容が古い・複雑すぎる・誤情報の可能性があるかを判断)
こうした機能を活用することで、不要な記事の整理や改善が可能になり、より精度の高いナレッジベースを維持できます。
ITILのフレームワークに基づくポイント:継続的改善(CSI)を実践し、誤った記事の排除や内容の最適化を行う。
ServiceDesk Plusの特長:利用者で記事の評価ができ、管理者はその指標をレポート化して分析。
ナレッジ管理の最適解としてServiceDesk Plus
ITIL®のフレームワークに基づくナレッジ管理には、セルフサービスポータルとの統合、スマートな記事作成、適切なワークフロー、アクセス管理、承認プロセス、フィードバック機能が不可欠です。これらの要素を網羅し、ITサービスデスクの運用効率を最大化するために、ServiceDesk Plusは最適なソリューションです。ナレッジの活用と継続的な改善を実現し、より迅速で高品質なITサービスを提供するために、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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