ファシリティマネジメントとは?具体例と共に運用ツールを紹介

ITサービスマネジメント(ITSM)

施設管理とは違う!ファシリティマネジメントとは?

ファシリティは日本語で「施設」だから、「施設管理」と同意義だと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際はファシリティマネジメントの方が、長期的・経営的な視点から物事を見ることができるのです。
ファシリティマネジメントについて簡単に説明すると、「建物やスペース、機器、アメニティなどを企画・管理しすべてをより効率的に活用していくための経営管理(マネジメント)」のことです。

ここで大切なのは、

  • オフィス空間や人々の利用環境すべてを含めてファシリティとする
  • 経営的・長期的な視点から最適化をする
という2点です。

施設管理では修繕、空調メンテナンスなどをするとしたら、
ファシリティマネジメントはそれらをするとともに、まず そのファシリティが必要なのか、アメニティなどを取り替える以外に最善策があるか、 などについて考えます。

facility-1 (スペースの繋がりを視覚的に把握できるServiceDesk Plus内のスペースツリー機能)
ツールを使用するとファシリティマネジメントをスムーズに進める事が出来ます

3つの層と、施設管理との差

ファシリティマネジメントには3つの層があります↓

  • 日常業務(日常の運営維持:清掃、保全、修繕、など)
  • 管理業務(ファシリティの最適な状態への改善:効率化、低コスト化)
  • 経営視点(経営にとってプラスとなる統括的で最適なあり方)

このすべての段階でファシリティマネジメントに携わっていくことで、トータルで見た投資コストの削減につなげることも可能です。

施設管理とファシリティマネジメントの差異↓

施設管理ファシリティマネジメント
管理対象施設施設だけでなくアメニティやWifiなど、「施設経営」
目的維持・保全最適化
担当者総務部など複数部署

ファシリティマネジメントの必要性 ~市場規模~

ファシリティマネジメントの市場規模は拡大しており、2023年には世界中で1兆2600億米ドルの規模まで膨れ上がりました。

2030年までには2兆314億米ドルにまで成長する見込みです。

参考文献:Fortune Buisness Insights (2023)『Facility Management Market Size, Share, Trends & Covid-19 Impact Analysis, By Service Type (Hard Services, Soft Services, and Other Services), By Industry Vertical (Healthcare, Government, Education, Military & Defense, Real Estate, and Others), and Regional Forecast, 2023-2030』 https://www.fortunebusinessinsights.com/enquiry/sample/facility-management-market-101658

つまりグローバルで見ると、2023年から2030年までに約2倍の市場規模に膨れ上がるのです。

また日本だと、建設投資額は2023年で70兆3,200億円となる見通しです。

参考文献:国土交通省総合政策局 情報政策課建設経済統計調査室 『令和5年度(2023年度)建設投資見通し 概要』 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk2_000058.html

これからも建設投資額は増加し、同時にファシリティマネジメントの需要を拡大すると言えます。ファシリティマネジメント市場は日本でも国際的にも、急速に拡大しています。
しかし特筆すべき点は拡大する市場規模だけではありません。皆様はライフサイクルコスト(LCC)をご存じでしょうか?
ライフサイクルコストには建築費だけではなく、ランニングコストの固定資産税や光熱費・消耗品費・回収、更新費などが含まれます。
建物は竣工後から解体廃棄されるまでの期間に建設費のおよそ3~4倍の費用がかかるといわれています。これがライフサイクルコストです。建物の運営や修繕更新を、計画性をもっていかに行うかによって、発生する費用や建物の寿命は大きく異なります。

引用:鹿島『建物のライフサイクル技術 運営管理とLCC』
https://www.kajima.co.jp/tech/tatemono_sodan/admin_lcc/lcc/index.html

このようにファシリティマネジメントで考慮されるのは、短期的な「建設費」だけではありません。維持費など建設費の倍以上のコストがかかることも視野に入れて、経営をしていくための指針にもなるのです。

ファシリティマネジメントの事例

西日本電信電話 株式会社はファシリティマネジメントに関しては、本社拠点集約化と働き方改革と連動した新しいセンターオフィスのワークプレイス改革、新ビジネス創造の拠点構築と運営を中心に行いました。

効果は大きく、拠点集約により1年で2.6億円のキャッシュアウト(キャッシュフローにおける支出)削減、ファシリティコストの削減を実現出来たのです。

JFMA(公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会)のJFMA賞(ファシリティマネジメント大賞)を受賞した組織は、働き方改革とファシリティマネジメントを連動させています。今までの職場とは異なる、ハイブリッドなワークプレイス等を目指し、本社オフィスの再配置や新しいスペースの構築をしています。

参考文献:公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会『第18回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞) 入賞発表』 https://www.jfma.or.jp/award/index.html

では、ファシリティマネジメントのメリットとは何なのかを見ていきましょう。

ファシリティマネジメントがもたらすメリット3選

コスト削減

ファシリティマネジメントがどのようにコスト削減に繋がるのかイメージできない方もいらっしゃるかもしれません。

上記でご紹介した「ライフサイクルコスト(LCC)」をもう一度思い出してみましょう。

ファシリティには維持費がつきものですが、ファシリティマネジメントにより施設・備品・環境などの最適化を進めることができます。例えば新しいシステムの導入により、人件費を抑えることができます。また設備・備品を新しくすることにより、総合的に見ると維持費が安くなったり、そのモノ自体の寿命が長くなり、買い替えのコストも削減することができます。

スペースの有効活用

全てのスペースを把握し、用途などを明確にすることもファシリティマネジメントの要素です。これにより、不要なファシリティや非効率な使われ方をしている設備なども明確になります。余っているスペースや非効率な使われ方をしているファシリティを再定義することも可能になります。

従業員オフィス通勤のモチベーション増加

ファシリティごとにあげられるインシデントなどを解決、または問題管理へとエスカレーションすることにより、ファシリティへの従業員の満足度も比例して上昇します。自宅勤務とオフィス勤務を合わせたハイブリッドな働き方を推奨している組織であれば、コミュニケーションのためにも従業員にオフィス通勤のモチベーションを上げることも重要です。その際に不足しているファシリティなどを明確にし従業員が働きやすい職場にするためにファシリティマネジメントが役立つのです。

またファシリティマネジメントを進めていくにあたり、ツール使用により少ない工数でも効率的に運営が出来ます。

ツールを使用するメリット

  • 有効利用されていない/問題のあるファシリティを社員からの問い合わせですぐ把握
  • 文字ベースだけでなく、視覚的にスペースのつながりを把握
  • 問い合わせに関連するファシリティをカンタンに把握
  • ファシリティマネジメントを自社内で完結
  • 自動化で工数を削減

弊社にはファシリティマネジメントに役立つITSMツール「ServiceDesk Plus」がございます。ファシリティマネジメントを施行する際の課題点とともに、ServiceDesk Plusがどのように活躍するかを見ていきましょう。

ファシリティマネジメントでよくある課題と解決策

有効利用されていないスペース・問題がある全ファシリティの把握が難しい

ファシリティマネジメントの担当者で全ての課題等を確認するのは大変な工数がかかってしまいます。また設備などであれば、定期的に使用しないと分からない問題などもある為、担当者のみでは把握しきれません。

また改善して欲しいファシリティについて社員にアンケートをとっても、リアルタイムで起る問題の定期では無い為、継続的な改善は見込めないでしょう。

以上の理由から、メールなどで随時受ける問い合わせをもとにファシリティマネジメントをしようとしますが、ここで新たな問題が出てきます。

解決方法が浸透しておらず、何回も同じ問い合わせが届く

どの階の、どのスペースに、どのような問題があり、どのように対処すれば良いのかといった情報は、社員に浸透させるのは簡単ではありません。ファシリティに関する問題や解決策を社員にメールなどで全員に解決方法などを送付しても、時間が経つにつれて忘れられてしまうケースは多々あります。

ServiceDesk Pusでは:ナレッジ(製品内ではソリューション)を社員のポータルサイトで確認可能

ServiceDesk Plusには問い合わせの件名にナレッジの件名と同じ単語などが入っていると、自動的にナレッジを表示してくれるため、自己解決を促進します。

インシデントやリクエストを送る社員(以下依頼者と記載)はポータルサイトにアクセス出来ます。そこで既に問い合わせ担当者(以下技術担当者と記載)が作成したソリューションを閲覧することにより、自己解決を促します。

facility-2 (社員がアクセス可能なサービスポータル内のホーム画面)
facility-3 (ソリューションの一覧、詳細の確認が可能)
ソリューションの一覧を依頼者はカンタンに閲覧できます。

また便利な機能として、依頼者がお問い合わせテンプレートで件名を入力する際に、関連するソリューションを表示出来ます。

facility-4 (依頼者がお問い合わせをする際に表示されるおすすめのソリューション)

問い合わせの解決をするだけで完了してしまい、改善のステップに進まない

社員からの問い合わせに担当者が対応し、その内容自体は解決します。しかし、実際になぜその施設でそのような問題が起こってしまうのか、を議論するかどうかの決定は担当者だけに任せられてしまいます。またその問題自体を改善することにより得られるメリットを見過ごしてしまう事にもなります。

ServiceDesk Plusでは:インシデントから「問題」チケットの作成可能

インシデント対応のような簡単な対処ではなく、ファシリティに関する根本的な問題を解決するするために問題として新たにチケットを作成できます。

facility-5 (技術担当者画面で閲覧できるインシデント詳細情報ページ)

インシデントから問題にエスカレーションし、紐づけることで得られるメリットは、下記の通りです。

  • なぜこのような問題が上がってきたのかを、インシデントチケットを参考にして考えることができる。
  • どのような経緯があったのかを、インシデントチケットから確認できる。
  • インシデントから対応をしてきた技術担当者や依頼を出した依頼者がすぐに分かる。

各ファシリティに何個の問い合わせが上げられたのかを包括的に確認できない

メールや電話など、統一性のない入口から問い合わせを受け付けていると、各ファシリティでどれだけ問題が出ているかをまとめるのに時間がかかってしまいます。この際にツールで把握することで、見直すきっかけになります。

ServiceDesk Plusでは:視覚的にお互いに繋がっているスペースと、紐づけられたリクエストを視覚的に把握できる

facility-6 (スペースツリータブから繋がっているスペース同士と紐づいているチケット数が把握可能)

またこの画面からチケットのアイコンをクリックすると、チケットの詳細情報を見ることができます。

そのほかにもファシリティマネジメント実施に活躍するServiceDesk Plusのファシリティインスタンスの機能をご紹介いたします。

ServiceDesk Plusファシリティインスタンスの便利機能

フォームに入力&選択するだけでカンタンにファシリティ追加可能

あらかじめ用意・設定したフォームに入力をしていき、選択していくだけでファシリティを追加出来ます。ここでどのスペースがどのスペースと繋がっているかも選択式で設定出来ます。

facility-7 (新しいファシリティを追加するためのテンプレート)

スペースの詳細を1クリックで把握可能

スペースツリーというスペース同士のつながりを視覚的に確認できるページがあります。そこからスペースの名前をクリックすると、そのスペースの詳細ページに遷移します。

facility-8 (スペースツリーからスペースの詳細を確認可能)
facility-9 (クリックしたスペースの詳細情報)

スペースに紐づいた資産、リクエストの確認がカンタン

スペース情報のページでは、そのスペースに紐づいた資産やリクエストなどの数が一目で確認できます。

facility-10 (スペース詳細情報ページ)

数をクリックすると紐づけられている項目の詳細も確認可能です。

この機能は、各スペースを改善する際にどの資産が必要か否かなどの検討にも役立ちます。

レポートの出力がカンタン

レポート機能で、どのビルのどのフロアに何個のリクエストがあるのかなどを出力出来ます。デフォルトであるレポートの数も多く、カスタムレポートでは入れたい項目をクリックしていくだけで簡単にオリジナルのレポートが作成出来ます。

どのファシリティでリクエストが多いのかを把握することで、率先して見直すべき点の洗い出しが出来ます。

facility-11 (デフォルトで用意されているレポートの種類)
facility-12 (カスタムレポートのカラム選択画面)

カスタムレポートでは、入れたいカラムやフィルターなどを選択していくだけで簡単に作成出来ます。

facility-13 (クリックするだけで出力できるレポートの例)

また作成したレポートはエクスポートすることももちろん可能です。

ワンクリックで問い合わせのリマインドメール設定可能

facility-14 (自動通知設定画面)

リクエスト対応の遅延や失念の防止に繋がります。

問い合わせ一覧を技術担当者で共有

技術担当者画面では、リクエストタブでインシデント・リクエストの両方を一括で確認できます。

facility-15 (リクエストの一覧もリクエストタブから一括で確認可能)

表示するリクエストのフィルターもデフォルトで用意されている為、「対応中のリクエスト」「未完了のリクエスト」など確認したい項目をすぐに確認出来ます。

設備の定期的なメンテナンス自動問い合わせ起票

ファシリティマネジメントでは、依頼があってから設備の確認をするだけでなく、定期的なメンテナンスも重要です。

ServiceDesk Plusでは定期的にすべき事を自動的に問い合わせを起票し通知としての役割も果たす、保全という機能があります。

facility-16 (メンテナンス問い合わせの詳細情報を記載できるテンプレート)

ここでもあるスペースに紐づけ可能です。これにより、問い合わせが自動起票された際にスペースツリーからも確認が出来ます。

日次スケジュール、週次スケジュール、月次スケジュール、~日間ごとといった定期スケジュール、そして一回だけ、といったスケジュールが詳細に設定出来ます。

チェックボックスに印を入れ、日時などを選択するだけでカンタンに自動問い合わせが起票出来る為、特別な知識は必要ありません。

Fortune Business Insightsによると、クラウドベースのツールによりファシリティマネジメントをすることが市場で増加する需要となってきています。

その要因として、クラウドサービスを使うことにって、部門を超えての協働とセキュリティを改善し、結果的にコストの削減に繋がることがあげられます。そして、重要データを安全に保管できるクラウドベースのツールが活躍しています。

バックアップがパブリックまたはプライベートクラウドにあることにより、危機が起きてもデータを迅速に取り返すことが可能な点も、魅力の1つです。

ServiceDesk Plusはクラウド版とオンプレミス版がございます。クラウド版の場合は評価版(無料トライアル)をフォーム入力するだけでお試しいただけます。

※ServiceDesk Plusではファシリティデスクを使用するために、クラウド版でサービスデスクインスタンスもご導入していただく必要がございます。

※ファシリティインスタンスはServiceDesk Plusで使用可能な機能にファシリティマネジメントの機能を追加したものです。