ITSMプロセスとワークフローの効果的な実践方法
ここからは、ITSMのプロセスとワークフローの構築、そして効果的な利用が簡単にできるようにするための事例・ベストプラクティスを紹介します。
1.現在のITSMの運用を見直し、欠陥やズレなど問題点を突き止める
組織にITSMプロセスを実装する前に、最初の目標点・ゴールを決めてから進めるのがよいでしょう。ITサービスマネジメントのワークフローの実装には、万能のアプローチはありません。そのためITSMプロセスが可能な領域を慎重に特定することが重要です。適切な人・信頼できる仲間を巻き込む。関連するテクノロジーを活用する。正しいワークフローを選ぶ。何かしらの懸念点や潜在的なリスクに注意する。さらに、指導者が何らかの見落としをしている状況でも、リカバリーが可能な戦略を用意しておきます。
2.ITSMプロセスの実装中に、関係者を教育しコミュニケーションを取り、巻き込む
マッキンゼーのレポートによると、プロジェクト変更の70%は、従業員が変化を受け入れることを経営陣が支援せず、望んでいないことで失敗しています。これを防ぐには、組織が変化を受け入れる文化をつくることが必要です。それにはすべての関係者が、優れたITSMプロセスを戦略化および実装するメリットを確信することで実現できます。そして実装チームの中核メンバー以外の人々とも、ワークショップやミーティングを通してコミュニケーションを図り、みんなが同じ目標に向かっていることを確認させます。
3.重要な成功要因の概要と、KPIと指標の監視
・営業時間の損失
ITサービスが利用できないためビジネスがダウンしている時間数。
・成功率の変更
与えられた時間枠で実行された変更の合計数に対する、成功した変更数の割合。
・インフラの安定性
高い安定性のインフラは、最大の有用性とごくわずかな停止、およびサービスの中断の少なさが特徴です。
・処理件数の傾向
与えられた時間内にITヘルプデスクによって処理された案件数とそのパターン。
・最初の問い合わせにおける解決率
最初のサポート段階(ITヘルプデスクへの最初の問い合わせやコンタクト)で解決されたインシデントの割合。
・SLA コンプライアンス率
合意されたSLA時間内に解決されたインシデントの割合。
・処理件数1件あたりの費用
ITサポートの月間運営費の合計を、月間の処理件数で割ったもの。
・ソフトウェア資産の稼働率
業務で実際に使用しているソフトウェア製品とライセンスの割合。
・インシデント対応時間
インシデントの対応にかかる時間。
・インシデント解決時間
インシデントの解決にかかる時間。
・再開率
解決後に再開された処理案件の数。
・問題解決時間
問題が特定された瞬間から、それを解決するのに要する時間。
4.関連ツールを使ってプロセスを自動化
ITSMソリューションは、最新の事例とワークフローを提供することで、ITSMプロセスの実装を簡略化します。ほとんどのヘルプデスクソフトウェアには、自動化、リアルタイム分析、カスタマイズ可能なITSMプロセスなどが含まれます。それらが適切なプロセスと相まって、ITチームの関心を応急処置的な作業から戦略的なビジネス目標とその成長へとシフトさせます。
また、ハイエンドで幅広い機能を持つツールにやみくもに投資するのではなく、組織のITニーズにふさわしいITヘルプデスクツールを選択することも重要です。多くの場合、利用可能なすべての機能をすぐに使用するわけではありません。現在のIT要件の大部分に合わせてカスタマイズ可能で柔軟性のあるツールに投資し、将来的にスケールアップできる機能を備えた方が賢明でしょう。実用的でユーザーにやさしく、他のIT運用管理ツールと統合できるツールを探す必要があります。これにより複数のサイロ化されたツールをかき集めるのではなく、IT運用管理プロセスを1カ所にまとめることができます。もちろん予算にも見合ったソフトウェアであることは言うまでもありません。
5.エンドユーザーや他の関係者からのフィードバックの輪を広げる
効率的なITSM戦略は、実装だけにとどまりません。時間の経過とともに継続的に開発する必要があります。組織がITSMプロセスを活用して、明確化されたビジネス目標を達成することが重要です。そのためには、ITチームはエンドユーザーからフィードバックを回収し、問題点を突き止め、望ましい状態を見える化し、改善に向けたロードマップを構築する必要があります。一般的にフィードバックは、テクニカルサポート、機能要件、ユーザーインターフェース機能の領域について行われます。また、ユーザーからのフィードバックが役に立たない場合があることも注意すべき事柄です。優れた建設的なフィードバックを抽出するには、調査の質問を慎重に組み立て、具体的な内容にする必要があります。では、エンドユーザーからの良いフィードバックと、悪いフィードバックの例を見てみましょう。
悪いフィードバック:「あなたの会社のIT技術者はすばらしい」
良いフィードバック:「IT技術者がこちらの要求を処理する際の手際がすばらしい。営業担当のダニーさんは私が探していたものをよく知っていて、時間と労力を大幅に節約できるアドインを見つけるのを手伝ってくれました。私も気付いたことがあって、アドインがMicrosoft 365でも使えるのならうれしいですね。やはり、あなたの会社のヘルプデスクツールがいいですね」
最初の悪いフィードバックの例は、肯定的ですが内容が浅く、建設的な意見を何も与えてくれませんでした。一方、良いフィードバックの例は、改善につながる情報を提供し、製品の良さを裏付けています。
ITSMツールの選び方
満足のいくITサービスマネジメントのゴールを念頭に置き、ビジネスニーズに対応する サービスデスクソリューション に投資することが重要です。いくつものサービスデスクツールから選択するため、ふさわしいツールを選択することは口で言うほど簡単ではありません。ツールを選択する際の注意点を紹介します。
主要なプロセスとその依存関係の特定
ビジネスの目標に基づき、実装する必要のある鍵となるITSMプロセスを決定し、目標達成のため確立する必要のある統合を図で示します。例えば、ITの変更の多くが、寄せられたインシデント要求に依存している場合は、この2つのITSMプロセスが緊密に統合されたツールを探します。
ITSMのエキスパートと相談する
ビジネスエキスポ、ウェビナー、デモなどに参加し、市場で利用可能なさまざまなオプションについて自分自身を教育します。GartnerやForresterなどの専門アナリストのレポートには、複数の評価基準に基づいてランク付けされた、ほぼすべてのソリューションのレビューが含まれているため便利です。
デプロイのオプションの選択
ビジネスごとに異なるITインフラのモデルがあります。 オンプレミスまたはSaaSのITSMツール の選択は、自社サーバーでアプリケーションとデータをホストするか、パブリッククラウドまたはプライベートクラウドを使用するかによって異なります。
機能要件チェックリストの「ニーズ」と「必須」を区別する
ITSMツールが提供する膨大なサービスに圧倒されてしまうことが多々あります。そのため、組織でITサービスを実行するための要件を明確にし、それらに優先順位を付けることが重要です。豊富な機能を提供しているように見えても、基本的な要件を満たしていなければ、そのITSMツールをそれ以上検討する必要はなくなります。≫要件整理シートを使う
将来に向けた計画
主に「ニーズ」を考慮することは重要ですが、二次的または十分すぎる機能を排除するべきではありません。 ITSMツールが組織の成長に合わせたニーズに適応できない場合は、進行を妨げる可能性があります。ビジネスの方向性を明確に描き、柔軟で技術的に優れているITSMツールを選択します。
市場で入手可能なツールを評価する
要件ならびに希望の展開方法のリスト化し、ITSMツールの機能と照合します。機能要件を「必要な機能」と「あればよい機能」に分類すると、導入候補を絞るのに役立ちます。提案プロセスの要求を実行し、機能を一覧表示し、価格やサポートなど様々な要素にウェイトを割り当てていくことが重要です。この段階に達したら、技術担当者に無料の試用版をいくつか評価してもらい、ユーザーエクスペリエンスを確認することを勧めます。そこから、より情報を得て適切な選択をすることができるはずです。
ITSMツールの機能に立ちとどまらない
ITSMツールの機能や特徴で評価したくなるかもしれませんが、ツールのベンダーを評価することも重要です。優れたITサポートチームと、顧客との関係が確立されているベンダーは、ITサービスを大幅に向上させることができます。Gartnerのマジック・クアドラントや他のアナリストレポート、また製品とサポートのレビューをチェックして、上記のツールが優れたカスタマーサポートを提供していることを確認します。
サービスデスクユーザーの67%が新しいITSMツールの最上位の選択基準として製品機能を選択し、65%がセルフサービス機能を選択。53%が簡単に構成およびカスタマイズできる機能を、45%が品質サポートへのアクセスのしやすさ、また45%が使いやすいUIを選び、24%がESM /エンタープライズ機能を選択しました。
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本記事は、原文(英語)を抄訳したものです。