ネットワークの輻輳とは
輻輳(ふくそう)とは、ものが一か所に集まることを意味します。通信や帯域で「輻輳」が発生していると言った場合、ネットワーク回線や電話回線などに利用が集中して、混雑することを指します。英語では「congestion」という単語を用います。
輻輳はネットワークトラフィック(通信)が通過するスイッチやルーター、ファイアウォールなどの、パケットが処理されるネットワーク機器で発生します。
輻輳が発生すると、通信遅延やネットワークダウンなどの障害に発展することもあります。輻輳が起こる原因や場所、改善方法や日々のネットワーク運用で気を付けるべきポイントを抑えておくことが、安定したネットワーク運用には不可欠です。
問題の通信を1分で特定する方法を解説
ネットワークの輻輳の具体例3選
ネットワークの輻輳についてより理解を深めるため、具体例を3つほどご紹介します。
1.あけおめメッセージ
以前は年末年始に多くの人が一斉に「あけおめ(あけましておめでとう)」メッセージを送る際に、よく輻輳が発生していました。ネットワークが混雑して、メッセージの送受信が困難になることがありました。ただし現在では、キャリア各社のキャパシティ強化などにより、メッセージの送受信に影響が出ることは少なくなりました。
2.フリーWi-Fiへの接続
フリーWi-Fiに接続する際にも、輻輳が発生することがあります。特に、イベント会場や駅などの人が密集する場所にあるフリーWi-Fiには、多くの人が同時に接続を試みます。その結果、ネットワークが混雑してWi-Fiに繋がりにくくなったり、繋がっても通信速度が遅かったりすることがあります。
3.オフィスネットワーク
オフィスネットワークにおいても、輻輳が発生することがあります。たとえば、同時間帯に一斉にWindows Updateが行われる場合や、特定のユーザーが大容量のファイルを送受信する場合、リモートワークへの移行によりVPN利用者が急増した場合などが挙げられます。オフィスネットワークで輻輳が発生すると、遅延や障害によりビジネス損失につながることもあるため深刻な問題です。
ネットワークの輻輳が起こる2つの原因
ネットワークの輻輳が起こる原因は大きく分けて2つあります。
1.通常よりも多くの通信が発生している
OSのアップデートやインターネット/クラウドサービスの多用、またはDos/DDos攻撃などにより、通常時よりも多くの通信が発生し、ネットワーク機器で輻輳が発生します。このような原因で発生する輻輳は突発的もしくは一時的なものが多く、原因が分からないまま断続的に発生する通信遅延に悩まされるケースもあります。
2.帯域の幅が適切ではない
上記の原因にも関連しますが、そもそもネットワーク帯域の幅が不十分な場合にも輻輳は発生します。 ネットワーク帯域の「幅」とは、どれだけのパケットを処理することができるかというネットワーク機器のキャパシティのようなものです。多くのパケットを処理できる場合は「帯域が広い、太い」と言い、少ないパケットしか処理できない場合は「帯域が狭い、細い」などと言ったりします。
社員の増加やクラウドサービスを業務で利用することが増えると、自然と業務で利用する通信量も増えていきます。このような場合、過去に適切だった帯域幅のままでは帯域が不足し、輻輳が発生します。
ネットワークの輻輳がもたらす2つの問題
上記でも少し触れていますが、輻輳はネットワーク遅延などの障害に繋がります。 このネットワーク遅延に起因する問題は様々ありますが、ここでは2つほど紹介します。
1.ネットワーク機器の処理速度低下
ネットワーク機器のポートに契約帯域以上のパケットが到達すると、超過分のパケットはバッファーと呼ばれる領域に蓄積されて、処理されるのを待つ状態になります。この待ちの状態をキューイングと呼びます。 キューイングされたパケットはすぐに転送されず順番に処理されるため、通信が遅いと感じるようになります。
2.パケットロス
上記で紹介したバッファーにおいて、蓄積されるパケットがバッファーの容量を超過した場合は、パケットは処理されずに破棄されます。これをパケットロスと呼びます。パケットは処理されるまでネットワーク機器に対して送付されるため、処理されるまでネットワーク機器に負荷をかけ続けます。
このように、様々な要因により「ネットワーク通信が何か遅い」と感じるようになります。
輻輳の問題をさくっと改善する方法
ネットワークの利用状況の把握が不可欠
輻輳の問題を改善するために、まずは帯域を広げる必要があるかを見極めます。例えば、業務に必要無い通信が原因で輻輳が起こっている場合や、一時的・突発的に輻輳が起こっている場合は、必ずしも帯域を広げる必要がありません。 業務に必要ない通信が原因で輻輳が起こっている場合は、その通信を行っている社員のネットワーク利用を改めることで改善します。 したがって、普段からネットワーク通信量を監視し、通信が増えたタイミングで分析していく必要があります。 業務に必要ない通信か否か、誰が行っている通信なのかを判断するためには、いつ・誰が・どんな通信を・どれだけ行っていたのかという詳細な分析をする必要があります。
いつ・誰が・どんな通信を・どれだけ行っていたのか可視化する方法
広く利用されているSNMPによる監視では、ネットワーク機器を通過する通信総量を把握できるものの、それ以上の詳細な分析は困難です。通信の詳細分析を行う場合、フロープロトコルを活用することが効果的です。 NetFlowやsFlowに代表されるフロープロトコルは、ネットワーク機器上で動作するプロトコルで、パケットから通信分析に必要なデータを抽出し「フローデータ」というデータを生成します。
このフローデータをわかりやすく可視化するツールであるフローコレクターで可視化することで、以下のような詳細な分析を数クリックで実現できます。
まとめ
- 輻輳とは、回線に利用が集中して混雑することを指す
- 輻輳の原因は、通常以上の通信発生もしくは帯域不足で起こる
- 輻輳は、ネットワーク機器の処理性能の低下やパケットロスを引き起こす
- 帯域幅を広げる前に、まずはネットワークの利用状況を把握する
- フローコレクターを活用することで、手軽にネットワークの利用状況を可視化できる
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